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<船型形状追従性>
SR196A/B/C船型をNICEコードで解析し、船体周囲流場についての実験結果との比較による精度検証、形状影響係数Kや公称伴流係数1−Wnの船型追従性の検討および計算結果を基にした船型評価を試みた。プロペラ位置での伴流分布を図5.1.4.3に示す。公称伴流係数および形状影響係数を図5.1.4.4に示す。また、船体表面圧力分布を図5.1.4.5に示す。さらに誘導抵抗値の分布(図5.1.4.6)を計算し船型評価を行った。
以上の結果より、以下のような知見が得られた。
・伴流分布や船体表面の圧力分布の計算結果は実験結果とほぼ一致する。
・形状影響係数や公称伴流係数の船型差による定性的変化は推定可能である。
・形状影響係数はB→A→Cの順に増加するが、これは船尾縦渦による誘導抵抗に起因している。図5.1.4.5、図5.1.4.6は「流場解析的船型計画法」への本推定法の活用の一例である。
(b)その他の例
スターンバルブをもつ現代版肥大船SR221A/B/Cシリーズ船型、Cb=0.837の超肥大船型「だいおう」への適用性を検討した。
SR221船型はA→C→Bの順に船尾肋骨線形状がV→U型になるシリーズで、スターンバルブ付近の格子生成にマルチブロック法を用いている。格子分割数13〜14万で、NICE法により計算した。図5.1.4,7にA.P.断面での伴流分布を示す。hook状のくびれが推定できており、実験との対応も良い。形状影響係数Kの計算結果は、実験結果に比べ定量的にはやや大きめであるが、船型変化には追従している。
「だいおう」周りの流暢を8.3万の格子分割数でNICE法により計算した。船体表面圧力分布を図5.1.4.8に示す。船尾近傍では圧力等高線の歪みまで実験結果と対応しており、オリジナルの乱流モデル(BLモデル)に比べ格段に改良されている。粘性抵抗の大きさの指標である1+Kは計算値が1,526、計測値が1.37で約11%高めに推定している。
SR221A/B/Cシリーズ船型周りの流場を約7万の格子分割数でWISDAM法により計算した。伴流分布については実験結果と良好な一致が得られた。形状影響係数Kの計算結果(図5.1.4.9参照)は、船型差に追従しており、また定量的にも実験結果とほぼ一致している。ただし、A船型の計算結果はやや低目になっている。圧力抵抗は船体前半部と後半部の積分により減算的に産出されるので、前後半部の格子生成に基づく計算誤差が混入されやすい。最終比較評価をする前に格子依存性を十分検討する必要があると考えられる。
(2〕評価
・多種類の肥大船型(船尾肋骨線シリーズ船型、スターンバルブ船型、超肥大船型)に対して適応性検討を行い、本基礎粘性流場推定法が船体周囲流場、圧力分布、伴流分布のみならず粘性抵抗とその成分(1+K)や伴流係数1−wについても推定精度が高く、良好な船型追従性を有することが明らかになった。
・所期の目標であった船尾粘性流場に関する実用的推定法を構築することが出来た。

 

 

 

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